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谷川から水路へと流れる清き水は、美しい曲線を描く“神の田”へ――。日本の原風景ともいわれる田染荘には、今もなお中世の風が吹いています。
火山活動でできた円錐形の国東半島。その南部に広がる田染盆地では、千年以上も昔の古代の頃から開発がなされ、平安時代には宇佐神宮の荘園「田染荘」が誕生しました。
荘園ができてから今までの間、確かにその場所で営まれた水田は、緩やかな進化を遂げながら現在に継承されています。荘官や荘園の人々が住んだ屋敷跡、水を運ぶイゼ(井堰)や水路、水を涵養するクヌギ林とため池・・・・・・。これらは田染荘の長い歴史を刻む「生きた荘園遺跡」でもあり、国東半島の独特な風土により形成されたわが国の生活生業の理解に欠かせない「文化的景観」でもあります。
また、田染荘には富貴寺大堂、熊野磨崖仏、真木大堂の木造大威徳明王像などに代表される六郷満山文化の至宝が残されています。これらの文化財の威風堂々とした姿に訪れた人々は驚かされますが、荘園の人々にとっては農耕などに関連した身近な存在に捉えなおされ、素朴な信仰と溶け合いながら今に伝わっています。
雄大な歴史に触れてみたり、人々の暮らしを味わったり、自然の営みに耳を傾けたみたりすれば、田染荘に残された素晴らしい景観を肌で感じることができます。まずは、夕日岩屋に出かけてみましょう。ここにしかない絶景があなたを待っています。